事故物件の告知義務と売却方法

2023.11.09

2023.11.12

売却基礎知識

こんにちは、リオン不動産株式会社　専任の宅地建物取引士の市成です。

映画や本がヒットしたり、有名な掲示板サイトがあったりと、気になる人も多い「事故物件」。

事故や事件で人が亡くなっていて、住むことに心理的な不安を抱かせる物件のことを「事故物件」と言い、相場より安く取引されるのは、ご存じの通りです。

そして、事故物件であることは不動産会社へ伝えた方が良いというところまでは、ご理解いただいている方が多いと思います。

しかし、

火事や自然死の場合も告知義務があるのか？
事件性はないものの、物件の不具合から起きた事故の場合は告知義務があるのか？
やっぱり安くしか売れないのだろうか？

といった疑問を抱える方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、告知義務とはどんなものなのか、売却するときにどんなことに気を付ければよいかを解説してまいります。

【目次】

事故物件の告知義務

2021年10月、国土交通省は「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を制定しました。

これにより、居住用の不動産において、

自殺や殺人
自然死や不慮の事故でも、長期間人知れず放置されてしまったことや、多大な損害がおこったことなどにより、特殊清掃や大規模リフォーム等がおこなわれた場合
事件性、周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案
集合住宅の共用部分における事案（バルコニーや、敷地内の共用エントランス、エレベーター、廊下、階段、駐車場などのうち、買主・借主が日常生活で通常使用すると考えられる部分で発生した事案）

のいずれかに該当する事案は、買主・借主およびその検討者への告知対象となっています。
ちなみに賃貸物件の場合、上記の事案の発覚から概ね3年が経過した後は、告知対象から外れます。
　※ただし、事件性、周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案はこの限りではありません
一方、売買物件の場合は経過期間を問わず告知対象となっています。

実はこのガイドライン制定までは、不動産会社ごとに解釈や扱い方が異なっていました。
現在もガイドラインに法的拘束力はなく、原則として調査の義務はありませんが、宅地建物取引業者が不動産取引をおこなう上で判断基準とするものとして活用されています。

もし事案の存在について説明されないまま売買契約が結ばれた場合は、買い手は不動産業者に対して損害賠償を請求することができます。

そうなると、不動産業者は宅地建物取引業法違反により、業務の一時停止や宅建業免許のはく奪に処されることになります。

売主も、事案の存在について知りながら故意に告知しなかった場合等には、民事上の責任を問われる可能性があるため、不動産会社への告知を必ずするようにしましょう。

売主様から不動産会社への告知のタイミングについては、特に決まりがありません。
信頼できる担当者を見つけてから、再度「実は…」と話して査定額を出し直してもらう、ということもできます。

ちなみに、売買契約までは事案の存在を知らずに販売していて、契約後から引き渡しまでの間に知ったという場合も告知義務があるとする裁判例があるので、知った段階で担当者へ連絡しましょう。

　◎引き渡し完了までは、必ず知った段階で不動産会社の担当者へ連絡する！

告知義務がないケース

さらに詳しく、告知義務がないケースについても確認していきましょう。

老衰や病死などの自然死
事件性のない入浴中の溺死、転倒事故、誤嚥など、日常生活の中での不慮の事故
　※特殊清掃等がおこなわれていない場合
対象不動産の隣接住戸又は買主・借主が日常生活において通常使用しない集合住宅の共用部分における事案
　（例）売る住戸とは別の住戸の室内、買主・貸主が使用しない棟のエントランス、通常使用しない階の廊下
　※事件性、周知性、社会に与えた影響等が高い場合を除く

こういったケースは、告知対象ではありません。

ちなみに火事のおきた物件でも、その火事によって人の死が発生していなければ原則告知対象ではありませんが、念のため不動産会社へ情報を共有しておくことをおすすめします。

「運気が良くない」と思われ、査定価格が安くなる可能性がありますが、承知で買い受けてくれる買主を探す方向へ進めていくことが、後々トラブルや負担なく済むと思います。